自動車損害賠償保障法16条に基づく被害者請求を検討すべきケース
【下記の物語は、交通事故後に関わる制度を題材としたフィクションです。
内容は、交通事故に遭った際に関わり得る一般的な制度を物語形式で分かりやすく紹介するためのものであって、実在の人物及び出来事とは一切関係の無い、制度紹介の為の創作物語です。】
「…施術費のお支払いにつきましては、今月一杯で、当社では対応を終了させて頂きます」
突然来た保険会社からの電話。施術費の打ち切り通知だ。
受話器を置いた手が、汗ばんでいた。

三か月前から通院している〇〇君の顔が思い浮かぶ。
最初の施術の日、「野球部に戻れるかな」と、無理に作った笑顔が忘れられない。

交通事故で首を捻挫し、うちに来た高校生だ。
野球部でピッチャーをしていた。
投球動作では、頚部から肩甲帯の回旋連動性が不可欠だ。
痛みや筋緊張があると、フォームが崩れ、
肩や肘に二次的障害を招くこともある。

せめてあと1ヶ月あれば、野球ができるであろう程に改善してきているのに…。
そもそも、あの子は被害者だぞ。
翌月のある日。院に夕陽が差し込み始めた頃、扉が静かに開いた。〇〇君だった。
「先生、今日お願いしていい?」

制服のポケットから、くしゃくしゃの封筒を差し出す。
「もう保険が効かなくなるから、って。母さんから」
中には千円札が五枚とメモ。
『治るまで、どうか宜しくお願い致します』
悔し涙をこらえる。「大丈夫。必ず治すからな」
諦める前に
任意保険会社は営利企業であるため、内部基準に基づいた判断で施術費の打ち切りを行うことは、よくあることであります。
しかし、だからといって施術を続けられなくなるわけではありません。たとえ任意保険会社が支払いを打ち切ったとしても、被害者には自動車損害賠償保障法16条に基づき、自賠責保険会社へ直接請求(被害者請求)を行う権利が残されています。
自賠責保険の被害者請求は、国が定めた基準に基づき被害者を救済することを目的とした制度です。そのため、必要性が認められる施術であれば、自賠責保険を通じて支払いを受けられる可能性がありますし、通院日数に応じた慰謝料も請求することができます。
まだ諦める必要はありません。被害者請求という制度を適正に活用することで、必要な施術を続けられる可能性がございます。当事務所は、自動車損害賠償保障法16条に基づく被害者請求の書類作成業務を行っております。ご検討されている方は、ぜひお問い合わせください。
